
野口 桂佑
1984.5.27生まれ 静岡県出身
株式会社 Bande Japan 代表取締役
選手経歴
- 和田岡サッカー少年団
- 掛川JFC
- 静岡県立小笠高等学校
- 大原学園 日本スポーツ科学専門学校
- 飯能ブルーダー(関東1部)
- aventura川口(埼玉県1部)
- 坂戸シティー(埼玉県1部)
- 与野魂蹴会(埼玉県2部)
- 慶應BRB
- LB-BRB
- LB-BRB-B uykyo
- aventura川口(関東2部)
- 全国専門学校大会準優勝
- 全国社会人大会出場
- 全国クラブ選手権関東大会出場
- 埼玉県1部リーグ 優勝4回
これまでの指導歴
- 掛川JFC コーチ兼GKコーチ
- ふじみ野フットサルスクール メインコーチ
- 共栄大学 GKコーチ
- 東京大学ア式蹴球部 GKコーチ
- 尚美大学女子サッカー部GKコーチ
- アビリスタU15テクニカルアドバイザー
- バルセロナアカデミー横浜 GKコーチ
- 2022埼玉国体成年の部GKコーチ(全国3位)
現在指導中
- Bande GK Academy 代表
- 埼玉県立南陵高校女子サッカー部GKコーチ
- 学校法人盈進学園
東野高等学校男子サッカー部GKコーチ - アヴェントゥーラ川口GKクラスアドバイザー
「野口 桂佑」
はじめに
はじめまして。DEという会社でコピーライターをやっている松木(28)といいます。これは野口桂佑(以下、 野口さん)さんに関するちょっと長めの紹介文です。第三者の目から見て野口さんがどんな人か、どんな魅 力を持っているか、自由気ままに書かせてもらうつもりです。野口さんと松木は、2014年から2015年の2 年間、東京大学ア式蹴球部(サッカー部)のコーチと現役プレイヤーという関係性。野口さんはGKコーチ、 僕はフィールドプレイヤーだったので、すこし離れた距離にいました。ただ、現役引退後の1年間、僕が部 活のOBコーチという役割で、野口さんと同じコーチ業を務めたこともあり、そこからいろいろと野口さんのことを知るようになりました。前置きはこの辺にして、早速はじめていきましょう。

ゴールキーパーの不思議
どれだけの人が「ゴールキーパー」(以下GK)について深く考えたことがあるでしょうか。野口さんを語るまえに、せっかくだからGKについてあれこれ考えてみようと思います。よくよく考えてもみれば、GKというのはとても不思議なポジションです。みんなが脚でボールを扱う中、一人だけ手を使うことが許されています。みんなが敵陣のゴールネットを揺らそうと走っている間、一人だけ自陣のゴールに張り付いています。練習メニューも周りとは別。同じスポーツをやっているようで、実は全然違うことをしていたのではないか。15年サッカーをやってきて、いまさら、そんな驚きがあります。そして、そんなGKを育成年代から好きで選んでいる子どもたちがいるという事実にもまた驚きます。言葉を選ばずいうと、GKはあまり目立ちません。例えば、 サッカー界最高の個人賞「バロンドール賞」にGKが選ばれることはほぼありません。どうしても、メッシやロナウド、モドリッチなど華やかなプレイをする選手が注目されます。それでも、GKは一定の人気があるのです。そして、ぼく自身も「GKらしさ」というものに心のどこかで憧れを抱いていたりもします。今まで出会ってきたGKたちを振り返ってみると静かでおだやか。だけど、肝心なときには声を荒げる勇気をもっている。みんな、真面目でとても誠実だったのです。サッカーというと、なんだかチャラついた雰囲気も感じるスポーツですが、ことGKに関していうと、それとはまたすこし違う、不思議な奥深さや味わいがあるように思うのです。
GKという「道」
そんなふうに、GKとはなんだろうということを考えていると、僕の中にぼんやりと浮かび上がってきた仮説 がひとつ。GKとは、柔道や剣道や合気道などの「武道」に近いように思うのです。例えば、GKの練習メニューには修行のような反復練習が欠かせません。簡単なセービングひとつとっても、そこには「型」があり、先人たちの「教え」があります。そして、大げさな言い方かもしれませんが、「生き方」が力量にもあらわれてく る唯一のポジションだと思うのです。よくGKは敵のシュートへの「準備」が大切だなんて言われますが、その「準備」にはふだんの過ごし方や生活も含まれているように感じます。ゴールキーパーがタバコを吸ったり、夜遅くまで飲み歩いていたりしたら、なんかいやですよね。派手でやんちゃな生活をしていたら大事なゴールを任せる気にならないですよね。責任の伴うポジションだからこそ、技術やフィジカルだけでなく、そ こにたしかな精神性を求めてしまうのだと思います。豊かな人格や高い道徳心を求めてしまうのです。そういった意味では、もはや「GK道」と呼んでもいいくらいです。現代的なスポーツでありながら、どこか伝統 的な「道」の要素がある。そういった側面が、GKを味わい深くしていると思うのです。
「人として」の指導
そこで野口さんです。前置きが長くなりました。「生き方」や「精神性」なども含めて、「GK道」のようなものを 指導しようとしたときに、野口さんほど適任な人はいないように思うのです。GKの技術やフィジカルを指導することに加えて、人の「正しさ」「道徳」まで野口さんは指導できてしまうのです。この点において、野口さんは本当に圧巻だったなと、いま振り返って思います。野口さんは、サッカーの前に「人として」の指導をします。「頭でっかちな東大生と対照的な野口さん」の、とても印象的だったエピソードがあります。野口さんはよく「掃除ちゃんとしようよ」と言います。そして、「そういうところがプレイに表れるんだよ」とまで言います。 たしかに、部室もグラウンドも綺麗な方がいいに決まってる。でも、それがプレイにまで関係するとは東大生は考えません。ロジカルに左脳で考えて「時間は限られているのだから、その時間は練習にあてた方がいい」なんて結論になったりすることもあります。野口さんの言葉はなかなか東大生の心には響かない。ただ、野口さんはそこで終わりません。何度も何度も繰り返し伝えます。理屈ではなくて「そっちの方が気持ち いいでしょ」「そっちの方が正しいでしょ」と、感覚的に右脳で指導するのです。野口さんはそういう「人とし て」の部分を、ものすごく大事にしていました。こういった礼儀や倫理みたいなものは、プレイに表れてくるのでしょうか。答えはYESだと思います。もっと正確に言うと「YESだと信じる」ことから真摯なサッカーは始まるのだと思います。野口さんはそういうことを伝えたかったように思います。試合の勝ち負け、技術の上達 の前に、人として正しくあれ。そして、それが近道でもあるのだということです。この掃除の話がその後どうな ったかはあまり覚えていないのですが、野口さんのこの指導は少なくともGK陣にはしっかり浸透していて、 同期も先輩も後輩も人として尊敬できるGKばかりでした。

なによりも、楽しむこと
野口さんが真っ直ぐで大真面目な人のように語ってしまいましたが、かなりふざけた人でもありました。大学生に混じりながら、いちばん元気で若いのが野口さんです。部室のお風呂にアヒルのおもちゃを浮かべてキャッキャしたり、選手につまらない冗談言ったり。最初は、そんな雰囲気が東大サッカー部ではとても異質に見えました。でも、1年たってみると、その雰囲気は次第に部に浸透してきていました。特にGK陣。 いつも楽しそうにグラウンドに現れます。失点につながるかもしれない、重圧のかかる選手たちがいちばん和気あいあいとしているのです。思えば、「来週の試合に勝つか負けるか」ばかり気にしていた選手たちに対して、野口さんはどこまでいっても「サッカーの楽しみ方」の指導をしていたように思います。僕の同期に 金瀬というGKがいます。170cm前半。身長は決して高くはありません。身体能力が並のGKというのは想像以上に大変です。大学サッカーのレベルまでくると、限界を感じることもあります。ただ、彼は野口さんとの出会いで、GKへの希望を見出していました。背が低くてもできること。シュート予測の精度を高めたり、コ ーチングで周りを動かしてシュートコースを限定すること。キックで試合の展開を変えること。「GKってこん なに面白いんだよ」と野口さんから教わっていました。まずは、楽しみ方を伝えること。まだ知らない面白さ を教えてあげること。野口さんはそんな指導スタイルでした。そして、意外なことに楽しむことと結果を追い求めることは相反するものではなかったのです。「楽しむ」を積み上げた先に、自然と「結果」はついてくることを野口さんは知っていました。

指導者は子どもたちの未来に触れている。
野口さんは「言葉」の人でした。それこそ金瀬にも「いいか金瀬」と何度も語りかける様子をよく覚えています。そして、この見出し。「指導者は子どもたちの未来に触れている」という言葉。野口さんのinstagramを見ていると毎回出てきます。とても大切にしている言葉なのだなと感じますし、まさに野口さんの哲学が詰まっている。野口さんはBande GK Academyというゴールキーパー専門のスクールを経営しています。そこには埼玉県のいろいろなサッカーチームから若いGKが集まってきます。彼らはふだん所属しているサッカーチームとは別で、GKの力をつけるためにやってくるのです。面白いのが、そのスクールには、どこのサッカ ーチームにも所属していない子がいるらしいのです。その子は試合に出ることが目的ではないのです。シンプルにそのスクールが楽しい。GKが面白い。そして、「もっといいことがありそう」という期待で通っているの です。親御さんからしたら、人間としての成長、人格形成。そんなことを期待して通わせているのです。まさに子どもの未来をお願いしているわけです。東大ア式蹴球部でも、野口さんの契約期間満了時、現役の選手たちが「もう1年、野口さんの指導を延長してくれないか」と嘆願したという話があります。それも野口さんが好きとかそういうことだけではなく、野口さんに指導してもらうと「もっといいことがありそう」という感覚だと思うのです。人は環境を選ぶとき、そこに可能性があるか考えます。その環境が自分の未来をより良くしてくれるのか値踏みします。野口さんのスクールが選ばれる理由がきっとここにあります。野口さんに指導してもらうと、「もっとよくなりそう」と肌で感じるのです、きっと。「指導者は子どもたちの未来に触れている」という野口さんの言葉、子どもたちの視点に変えてみると、「未来が広がっている」「未来が増えている」 そんな感覚だと思うのです。しかも野口さんのスクールの合宿、全然サッカーしないらしいのです。サッカーするだけが、GKじゃない。このスクールに来たからこそ、サッカーだけじゃないということも知ってほしい。そ んなふうに、どこまでも子どもの未来に徹するスクールです。

経営する野口さんへ。
ここからは僕の完全な妄想であり、期待です。野口さんは指導者でありながら、実は経営者でもあります。 スクールの経営に、GKグローブの販売などもしています。きっと今後もいろいろ事業を広げていくのだと思います。ただ、経営者は経営者でも、「指導的経営者」であってほしいなと思います。経営者として、サッカ ー界に、社会に新しい価値を届けていく、というのはもちろんどんどんやってもらいたいのですが、そこに野口さんの「顔」が「声」があってほしいと思います。ビジネスで出会う人みんなを指導してしまうくらいが 野口さんらしいのではないでしょうか。野口さんはナチュラルに人に影響を与えることのできる人です。それは子どもであろうと、大人であろうと関係なく。サッカーの上手い下手も関係なく。だからこそ、「野口さんだからやろうと思った」「野口さんのおかげでやる気になった」。そんな事業が増えていく未来が、なんとなく想像できる野口さんだなと思いました。
